暇な会社ほど安くなる!?引越し会社は引越し価格をこうやって決めている
同じ引越しでもこんなに料金が違うのはなぜ?
引越し会社の価格の決め方はちょっと独特
しかし、引越し価格については少々事情が違います。たとえかかる費用が同じであっても、6万円で売られることもあれば3万円で売られることもあるのです。
なぜそんなことが起こるのでしょうか。
このページでは引越し会社の価格の決め方を、業界の裏側から解説します。
【このページのポイント!】
・引越し会社の費用の多くは「人」にかかるお金(労務費、人件費)です
・「人」にかかるお金(労務費、人件費)は、売上が多くても少なくても一定です
・引越しは特定の時期に集中します
・引越し会社は1年を通じて、需要の多い時期に儲けて、需要の少ない時期をうまくやりくりし、収支を立てています
・言い換えると、忙しい時はできるだけ高い料金で、暇な時は安くしてでも1件でも多くのお客さんを獲得しようとします
・引越し料金は、自社の空車率や競合他社の金額で値引き幅が変わります
引越し会社の費用構成
ヒントは労務費と人件費にある
引越し会社はどうやって価格を決めているのでしょうか?
価格決定のメカニズムを理解するため、まずは引越し会社の費用構成について明らかにしたいと思います。
引越しのサカイ(株式会社サカイ引越しセンター)の決算説明資料をご覧ください。
参考:株式会社サカイ引越センター 決算説明資料 16ページ「損益計算書」
ここで注目していただきたいのは、売上原価に含まれる「労務費」、そして販管費に含まれる「人件費」です。
簡単に言うと、労務費は引越し作業を行う現場スタッフにかかる費用、人件費は現場スタッフを除く営業や管理部門系のスタッフにかかる費用、いずれも「人」にかかる費用です。
資料によれば、売上に対して労務費比率31.6%、人件費比率19.5%、合算すると実に50.1%と売上の半分を「人」にかかる費用が占めていることになります。
参考までに、他業種の労務費比率がどうなっているかを見てみましょう。
※表:業種別、売上高対労務費比率
もっとも高い運輸業であっても、サカイ引越しセンターの32.1%を大きく下回る比率です。いかに引越し業が人を必要とするサービス、ビジネスであるかがよくわかります。
年間、月間、週間、それぞれにある引越しのピーク
人口移動、年間の約3割は3月、4月に集中 〜年間の引越しピーク〜
当然、人が移動すれば引越し会社への問い合わせも増えることになります。
ではどれくらいの人が春に移動をするのでしょうか?
2016年に総務省が発表した住民基本台帳人口移動報告を見てみましょう。
※表:月別、人口移動数
やはり3月と4月の数字が突出しています。特に3月は90万人超と全体の約18%ほどの集中、4月も合わせれば全体の32%を占めるまでになります。
月末・週末に引越しを 〜月間、週間の引越しピーク〜
まずは月間です。 ※アップル引越しセンター 2017/02の引越し実績より
※表:月別、引越し数(アップル引越センター 月間の単身引越し件数 017年2月のデータ)
最終週あたりから急激に引越し件数が増えているのが分かります。これは2月だけの傾向ではなく、毎月同様の推移となります。
なぜ月末に引越しが多いのでしょうか。理由は、不動産契約が月末で設定されていることが多いためです。現在の住居と新しい住居に発生する二重家賃を極力少なくするため、契約ギリギリまで現在の住居にいる方が多いということです。
次に週間です。
※表:曜日別、引越し数(アップル引越センター 週間の単身引越し件数 017年2月のデータ)
圧倒的に土曜日、日曜日の件数が多いことがわかります。土日に多い理由は、ご想像の通り土日休みの方が多いからです。さらに土曜日と日曜日を比較すると土曜日が日曜日より1割も多いことがわかります。土曜日に引越しを済ませ、日曜日は部屋の整理を早めに終わらせて、少しでもゆっくりしたいと考える方が多いようです。
需要集中期とそれ以外はこんなに料金が違う
高い理由の一つは「需要が固まるから」です。これは、引越し料金も同じです。
これまで見てきた「年間」「月間」「週間」で、それぞれどれくらい料金差があるものなのでしょうか?実際に数値に表して見てみましょう。
※表:引越し需要期の引越し料金水準
当たり前ですが、1年間通じて最も高いのが3月の月末付近の週末であることがわかります。
引越し会社はこうやって価格を決める
引越し会社はいつも「本当に欲しい金額(定価)」と「値引きできる限界の金額」の間で綱引きをしている
1.引越し業は「人」にかかる費用がとても多い
2.引越しには需要が多く集中する時期が存在し、料金は高くなる
では、需要が集中しない時、つまり平常時はどのようになるのでしょうか?
もちろん需要期よりは安くなりますが、暇な会社ほど安くなるという状況になります。
「引越し料金は旅行代金に似ている」と書きました。しかし、明らかに旅行と違う点があります。それは「見積り」が存在し、その「見積り」は引越し会社が「本当は欲しい金額(定価)」から始まり、そこから値下げが始まるところです。引越し会社はいつも「本当に欲しい金額(定価)」と「値引きできる限界の金額」の間で綱引きをしているのです。
<値下げしても仕事を取りたい理由>
その理由は「人」にあります。
引越し現場で働くスタッフには、正社員もアルバイトもいます。繁忙期であろうが、平常時であろうが、正社員の給与は支払わなくてはなりません。アルバイトも繁忙期だけいきなり集まるわけではないので、平常時もある程度仕事を確保して雇わなくてはなりません。
売上の多少にかかわらず、正社員には一定の費用がかかります(歩合制の会社もあります)し、アルバイトも仕事が無ければ辞めてしまいます。引越し会社からすれば、車が遊んでしまうくらいなら、仕事がなくて人がいなくなってしまうくらいなら、1件でも多く仕事をとったほうがいいわけです。空きがあればあるほど1件でも多く取りたいという考えは強くなります。
では、1件でも多く仕事をとるためにはどうするか。それは、競合の値段を知り、それよりも値段を下げることです。引越しに「安さ」を求める人は多いため、値下げが手っ取り早い受注率アップのやり方なのです。時には赤字覚悟の値下げにまで踏み切る会社もあります。
「需要期(繁忙期)は、できるだけ高い金額で取る」「暇な時(空車率が高い)は、1件でも多くの受注を取るため値下げをする」これが引越し会社の料金があってないようなものと言われる理由です。そして、引越し会社は1年を通じて、需要期に稼ぎ、それ以外の時期をいかにやりくりするかで年間収支を成立させています。
まとめ
暇な会社ほど値下げに応じる
引越しの料金はただでさえ、計算要素が複数・複雑である上に、需要の量によって金額が変動します。また、暇な会社ほど値下げ提案をする傾向にあります。
昨今は、平常時と繁忙期の値段格差が開いてきています。利用者からすれば不可解なことだと思いますが、理由はここで述べている通りです。
アップル引越センターの引越し料金を健全な範囲に納めるための工夫
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